度なしメガネの選び方|伊達は反射とフレームで決める
「視力は困っていないけれど、メガネをかけてみたい」。売場でよく聞く相談です。印象を変えたい、顔まわりに何か足したい、パソコン作業のときにほこりや乾いた風から目をふさぎたい。理由はいろいろですが、いざ選ぼうとすると「度が入っていないのに、何を基準にすればいいのか分からない」という声になります。
この記事では、度なし(伊達)メガネはレンズの反射とフレームの存在感だけで印象が決まるという一点を軸に、選ぶ順番と、後から度を入れる可能性まで含めた見方を整理します。
度付きと度なしの決定的な違いは、「目の大きさが変わらない」こと
度付きのメガネは、度数によってレンズ越しの目の見え方が変わります。近視用なら目が小さめに、遠視用なら大きめに映り、フレームの縁のあたりで輪郭が少しずれて見えることもあります。良し悪しではなく、そういう性質です。
度なしはそれがありません。素の目が、そのままの大きさで見えます。つまり、かけた印象を作る要素から「レンズの度数」が丸ごと抜けます。残るのは二つだけ。レンズ表面の反射と、フレームそのものの存在感です。度付きを選ぶときより、判断材料が少ない。だからこそ、この二つを意識するかどうかで仕上がりが変わります。
もう一つ、度なしならではの事情があります。かけっぱなしではなく、場面ごとにかけたり外したりする人が多いことです。ここが後の判断にも効いてきます。
レンズは「透明かどうか」ではなく、反射の出方で選ぶ
度なしレンズも、度付きと同じようにコート(表面処理)の選択肢があります。ここを何も指定しないと、店頭に並んでいたそのままの状態になることが多いので、一度は確認しておきたいところです。
見るポイントは三つあります。
1. 反射を抑えるコートが付いているか。 いわゆる無反射・反射防止のコートです。付いていないレンズは、室内の照明や窓の光が表面で白く跳ね返り、正面から見たときにレンズが光の板のように見えることがあります。度なしは目が隠れないのが利点なのに、反射でその目が見えなくなってしまう。写真に写る機会が多い人、対面で話す時間が長い人は、ここが効きます。
2. 反射の色。 反射を抑えるコートにも、残る反射の色味に緑系・青系・紫系などの違いがあります。正面から見て薄く残る色なので、肌や髪の色との相性が出ます。店の鏡は照明が明るいことが多いので、できれば窓際と店内の奥、二か所で見比べてみてください。
3. 色や機能を足すかどうか。 うっすら色を入れる、いわゆるブルーライトカットの類を選ぶ、といった選択肢もあります。ただし、こうしたレンズで見え方が楽になったと感じるかどうかは個人差が大きく、効果を言い切れるものではありません。目の痛み、かすみ、充血、頭の重さといった症状は眼科医の領域です。メガネ店でできるのは、見え方の相談と、かけ具合の調整まで。ここは正直に線を引いておきます。
なお、薄い色を入れると、反射の見え方も一緒に変わります。色と反射はセットで確かめたほうが早いです。
フレームの存在感は「外したときの顔との差」で測る
度なしは、かけ外しの多いメガネです。だから、かけた顔だけを鏡で見て決めると、外した瞬間に「別人みたいになった」と感じることがあります。会議でかけて、休憩で外して、また戻る。その往復が一日に何度もあるなら、かけた顔と外した顔の差が大きすぎないもののほうが、結果的に長く使えます。
試着のときは、面倒でも一度外して、また掛け直してみてください。見るのは三点です。
- フレームの太さ ── 太いほど、外したときの落差が大きくなります
- 色の濃さ ── 黒や濃い色は、線が一本増えたぶんだけ顔の印象が変わります。べっ甲柄や透明感のある色は差が出にくい
- 上辺の位置 ── 眉に重なるか、眉の下に収まるか。ここは数ミリで印象が動きます
度が入らないぶん、思い切った形を選びやすいのは事実です。ただ「せっかくだから普段と違うものを」と選んだ結果、かける回数が減っていく、というのはよくある失敗です。週に何回かけるかを先に決めてから、太さと色を選ぶと外しにくくなります。
後から度を入れられるか。買う前に確かめておく条件
いま度が必要なくても、数年先は分かりません。「気に入ったから、そのとき度付きにして使い続けたい」となったときに、フレーム側の条件で難しいことがあります。買う前に確認しておくと、選択肢が長持ちします。
確かめておきたいのは、次のようなところです。
- レンズの形と大きさ ── 縦幅が極端に小さいもの、逆にかなり大きいものは、入れられるレンズの種類が絞られることがあります。特に、将来的に遠近両用など中間の度数が要るレンズを考えるなら、ある程度の縦幅があったほうが無難です
- フレームのカーブ ── 顔に沿って強く湾曲した形は、度付きレンズを入れるときに制限が出る場合があります
- フチなし・上フチだけの形 ── レンズを穴や糸で留める構造なので、今入っているものと度付きでは扱いが変わります。作り直しの相談をしたときに、できること・できないことが分かれやすい部分です
- いま入っているレンズの素性 ── 度なしとして作られたレンズなのか、形合わせ用の簡易なレンズなのか。後者だと、傷や見え方の質は最初から期待できません。店で聞けば分かります
それから、度なしでもレンズは傷みます。拭き傷、コートの劣化は度付きと同じように進むので、レンズ交換は将来の話ではなく、数年後に普通に起きることだと思っておいてください。
「目を守りたい」で選ぶときの、できることとできないこと
乾いた風、ほこり、作業中に飛んでくる細かいもの。こうした物理的なものを、レンズ一枚でいくらか遮れるのは確かです。横からの隙間を減らしたいなら、レンズの縦幅がある程度あるもの、顔との距離が近いものが向きます。
ただし、一般的なメガネは保護具ではありません。花粉やほこりを完全に遮るものでもなければ、症状を良くするためのものでもない。目の不調があるときは、まず眼科で診てもらうのが先です。そのうえで「かけるものを用意したい」となったときに、メガネ店の出番になります。
決める順番と、実物で確かめたいこと
迷ったら、この順で決めると早いです。
- どの場面で、週に何回かけるかを決める
- 反射を抑えるコートを付けるか、反射の色をどうするかを決める
- フレームの太さ・色・上辺の位置を、外した顔との差で選ぶ
- 後から度を入れる可能性があるなら、形とカーブの条件を確認する
店頭で試すときは、鏡の正面だけでなく、少し斜めを向いて反射の出方を見てください。可能なら誰かに正面から見てもらうと、自分の鏡像では分からないテカリ方が分かります。鼻あての高さやテンプルの掛かりも、度なしだからといって適当でいいわけではありません。むしろ、かけ外しが多いぶん、緩みは早く出ます。
反射も、フレームの重さも、外したときの落差も、画面の中では判断がつきにくいものです。メガネの売場には一級眼鏡作製技能士が常駐していて、かけながら反射の見え方を一緒に確かめたり、そのフレームに後から度を入れられるかを見たりできます。決め切れないまま持ち帰るより、かけて、外して、また掛け直してみる。その数分で分かることのほうが、たぶん多いです。