パソコン作業用メガネは「測った距離」で決める
夕方になると画面の文字がにじんで見える、気づくと顔を前に出している、普段のメガネを外したほうが楽だからそのまま作業している——デスクワークが長い方からよく聞く話です。この記事では、作業専用のメガネを作るべきかどうかを、自分の机で距離を実際に測るところから判断する手順をまとめます。
なお先にお断りしておくと、目の疲れや見えにくさの原因が目そのものにある場合もあります。眼の症状や病気は眼科医の領域で、メガネ店にできるのは見え方の相談とメガネの調整までです。そこは最後にあらためて書きます。
まずメジャーを持ってくる。測るのは3つの距離
「パソコン用のメガネがほしい」という相談で、最初にお聞きするのは度数でもフレームでもなく、普段どのくらいの距離で画面を見ているかです。これが人によってまるで違います。
家でできる測り方は簡単です。いつもの椅子に、いつもの姿勢で座ってください。背もたれに背中をつけた、作業に入って30分後くらいの姿勢がいちばん実態に近いです。その状態で、メジャーか巻尺を使って次の3つを測ります。
- 目から画面の中心まで(cm)
- 目から手元の書類・キーボードまで(cm)
- 目から、顔を上げたときに見る先まで(部屋の壁、同僚の席、窓の外など)
1は50〜70cmに収まる方が多いのですが、27インチの大きなモニターを使っている方は80cmを超えることもありますし、ノートパソコンを直置きしている方は40cm台ということもあります。この差は、メガネにとっては相当に大きい差です。
測った数字は、メモして持っていてください。あとで相談するときに、これがあるかないかで話の早さがまるで変わります。
机の奥行きとモニターの高さで、必要な見え方は変わる
なぜ距離をそこまで気にするのか。理由は、同じ「パソコン作業」でも机の環境によって目の使い方が違うからです。
机の奥行きが70cmあって、モニターを奥に押しやって使っている方。この場合、画面はやや遠め、手元のキーボードはぐっと近め、という二段構えになります。画面に合わせた見え方だけを作ると、手元の書類が見づらくなります。
逆に、奥行き60cm以下の机や、ダイニングテーブルで仕事をしている方。画面も手元も近い距離に集まるので、必要な範囲は狭くて済みます。かわりに、その狭い範囲に長時間はまり続けることになります。
そしてもうひとつがモニターの高さです。画面の上端が目線より高い位置にあると、人は自然とあごを上げて見ます。これが問題になりやすいのは、今お使いのメガネが遠近両用の方です。遠近両用はレンズの下のほうが近く用なので、あごを上げて見る=レンズの上側(遠く用)で画面を見ることになり、画面がぼやけます。すると今度はあごを引いて見ようとして、首が妙な角度になる。夕方の首や肩の張りが、実はここから来ていることがあります。
モニターアームや台で画面の高さを変えるだけで楽になる方もいます。メガネを作る前に、まず机の側を調整してみる価値はあります。
普段のメガネを外して作業している人こそ、専用が要る
ここが本題です。
「近視のメガネをかけると画面が見づらいので、作業中は外している」。この方は少なくありません。外すとたしかに画面はよく見えます。ただ、このやり方には見落としがあります。
ひとつは、外して見える距離が、自分の机の距離と一致しているとは限らないこと。裸眼でちょうど見えるのが30cmなのに、画面は60cmにある。そうなると画面は少しぼやけたままで、それを見ようとして前のめりになります。前のめりの姿勢が夕方まで続けば、体のほうが先に音を上げます。
もうひとつは、顔を上げた瞬間に何も見えないこと。声をかけられて振り向く、時計を見る、席を立つ。そのたびにメガネを探してかけ直す。一日に何十回も繰り返していると、それ自体が負担になります。
外して作業している方は、裏を返せば「今のメガネは、この距離に合っていない」と毎日体で判断しているわけです。だったら、その距離に合わせた一本があったほうが素直です。度数を弱めた作業用、あるいは室内寄りに設計されたレンズ、といった選び方が出てきます。
「作業用」の中身は、一本ではない
作業用メガネといっても、中身にはいくつかの考え方があります。測った距離によって、向くものが変わります。
単焦点(ひとつの距離に合わせる)。画面の距離一点に合わせる作り方です。その距離はとてもクリアに見えますが、そこから外れると急にぼやけます。手元の書類をほとんど見ない、画面だけを一日見ている方には向きます。
中近レンズ(室内・デスクワーク寄り)。手元から室内の数メートル先までを、一枚の中でつなぐ考え方です。画面と書類の両方を見る、ときどき顔を上げて部屋の中を見る、という働き方に合います。中間域の設定を遠く寄りに振ることもできるので、遠近両用に近い使い勝手へ寄せることもできます。そのあたりの詰め方は、測った数字を見ながら相談で決めていく部分です。
今の遠近両用のまま、画面の高さを変える。これも選択肢です。メガネを増やさずに済むなら、それがいちばん手間がかかりません。
大事なのは、どれが優れているかではなく、自分の机の数字に合うのはどれかという順番で見ることです。先に「中近がいいらしい」と決めてしまうと、合わない設定で作ってしまうことがあります。
うまくいかないこと、店では答えられないこと
正直に書いておきます。作業用のメガネを作っても、解決しないことがあります。
作業用に度数を合わせた一本は、その距離専用です。かけたまま外を歩くと、遠くがはっきりしません。かけ替える手間は必ず増えます。「一本で全部」を期待すると、どちらの距離も中途半端になりがちです。場面を分けると割り切ったほうが、結果として楽になります。
また、画面が見づらい原因が度数ではない場合もあります。部屋が暗い、画面が明るすぎる、エアコンの風が直接当たっている、睡眠が足りていない。こうした条件で見づらさが出ているときは、メガネを作っても期待したほど変わりません。
そして、かすみ、痛み、まぶしさが続く、片目だけ見え方が違う、見え方が急に変わった——こうした症状があるときは、メガネ店ではなくまず眼科を受診してください。眼の症状や病気の診断は眼科医の領域で、私たちにできるのは見え方の相談とメガネの調整までです。ここは線を引いておきたいところです。
決める順番と、実物で確かめたいこと
整理すると、順番はこうなります。
- いつもの姿勢で座って、画面・手元・顔を上げた先の3つの距離を測る
- モニターの高さを確かめる。あごを上げて見ていないか
- 今のメガネで作業したとき、どこがどう見づらいかを言葉にしておく(ぼやける/にじむ/首が疲れる)
- 測った数字とメモを持って、相談に行く
3の「言葉にする」が意外と効きます。「見づらい」だけだと原因の候補が多すぎるのですが、「50cmの画面の文字が、夕方になるとにじむ」まで具体的になると、確かめる順番がはっきりします。
そのうえで店でできるのは、実際にレンズを通して、測った距離に紙や画面を置いて見てもらうことです。カタログの説明を読むより、その距離で実際に見える範囲がどのくらいかを体感してもらうほうが早い。フレームも、かけたときにレンズの上側・下側がどこに来るかで見え方が変わるので、実物をかけて鏡の前で確かめる意味があります。かけ具合の調整もその場でできます。
HAUSでは一級眼鏡作製技能士が常駐していて、検眼(視力測定)と中近を含むレンズの検査は無料です。「作るかどうか迷っている」段階でも、測った数字を持って相談に来ていただければ、作らないほうがいい場合はそれもお伝えします。まずはご自宅のメジャーで、3つの距離を測るところからどうぞ。