まな板は木かプラスチックか。乾かす場所で決める
まな板を買い替えようとして、木かプラスチックかで手が止まる人はとても多いです。木はいいと聞くけれど手入れが大変そう、プラスチックは楽そうだけど傷や匂いが気になる。調べれば調べるほど、どちらにも良いことと悪いことが書いてあって決まらない。
この記事では、素材そのものの優劣ではなく「洗ったあと、どこでどう乾かせるか」から逆算して選ぶ方法をお伝えします。ここを先に決めると、迷いはかなり小さくなります。
まな板選びで先に決めるのは、素材ではなく「乾かす場所」
まな板の失敗談を聞いていくと、素材が合わなかったという話はあまり出てきません。出てくるのはだいたいこの3つです。
- 洗ったあと置く場所がなくて、シンクの中に寝かせたままになる
- 立てかけたら不安定で、いつの間にか倒れている
- 厚くて重く、洗うのが億劫になって出番が減った
どれも素材の問題ではなく、置き場所と動作の問題です。まな板は調理台の上より、じつは「洗ったあとの数時間」のほうが長く場所を占領します。使っている時間は1日15分でも、乾かす時間は3時間、朝に洗えば半日そのままということもある。だからまず、次の3つを実際に測ったり見たりしてみてください。
1. シンクの内寸(横幅)。まな板を斜めでなく素直に置いて洗える幅があるか。シンクからはみ出すサイズだと、洗うたびに水が飛びます。
2. 立てかけられる壁または隙間。調理台の奥、コンロと壁の間、シンク横の20cmほどの隙間。そこにまな板を立てたとき、上が何かに当たらないか。吊戸棚がある台所では、意外と高さが足りません。
3. 風が通るか。換気扇の近く、窓のそば、あるいは壁にぴったり密着してしまう場所か。乾き方はここで大きく変わります。
この3点がはっきりすると、木かプラスチックかは半分決まったようなものです。
木とプラスチック、暮らしに効いてくる違いはここ
性質の説明は世の中にあふれているので、ここでは「日々の動作にどう出るか」に絞ります。
乾き方。木は水を吸って、時間をかけて内側から放出します。表面がさらっとしていても中は湿っていることがあるため、風の通る場所で立てて乾かす前提が必要です。プラスチックは吸わないので、表面の水を拭けばほぼ終わり。寝かせて置いても、裏側に水が残るくらいで済みます。ここが手入れの負担差として、いちばん大きく出ます。
重さと扱い。木は同じ大きさなら重くなりがちです。重さは包丁を受け止めて動きにくいという利点でもありますが、シンクで持ち上げて裏返して洗う動作が毎日ある以上、腕にかかる負担でもある。手首や肩に不安のある方は、ここを軽く見ないほうがいいです。プラスチックは軽く、片手で洗って片手で立てられます。
包丁の当たり。木のほうが刃を受け止めてくれる感触があり、長く切っていても手が疲れにくいと感じる人が多いです。ただしこれは感じ方の差が大きく、まったく気にならない人もいます。
汚れと傷の出方。プラスチックは色移りが残りやすく、傷の溝に色や匂いが入ると落としにくい。漂白できるのは強みですが、漂白しても白さが戻らない段階が来ます。木は表面を削り直すという手が残っていますが、それは自分でやすりをかけるか、削り直しを受け付けているメーカーに出すかの話で、誰にでも気軽な選択肢ではありません。
寿命の終わり方。プラスチックは傷が増えて反ってきたら交換、と区切りが分かりやすい。木は黒ずみやカビが出たときにどこまでが許容範囲か迷いやすく、判断が自分に委ねられます。この「判断を自分でしたくないか、したいか」も、けっこう性格が出るところです。
台所のタイプ別、向いているほうの見当
先ほど測った3点を、具体的な台所の形に当てはめてみます。
シンクが狭く、立てかける隙間もない台所。集合住宅のコンパクトなキッチンに多い形です。ここは素直にプラスチックが向きます。薄手のものを選んで、洗って拭いて、水切りかごの縁か食器の間に立てる。木を置くなら、乾かす場所を先に作らないと黒ずみで後悔します。
シンク横に20〜30cmの調理台があり、壁に立てかけられる。どちらでも成立します。ここまで来たら好みで選んでよい場所です。風が通るかどうかだけ確認してください。
吊戸棚が低く、立てたまま乾かせる高さがない。まな板を寝かせて乾かすことになるので、吸水しないプラスチックのほうが無難です。どうしても木を使いたいなら、立てて乾かせるサイズまで小さくするという手があります。大きい木のまな板を寝かせて乾かすのは、いちばん傷みやすいやり方です。
食洗機を使っている。木は基本的に食洗機に入れられません。まな板も食洗機で済ませたい暮らしなら、対応表示のあるプラスチックに寄せるのが現実的です。
一日に何度も台所に立ち、洗い物をこまめにする。木の手入れが負担になりにくいタイプです。逆に、夜にまとめて洗うのが習慣で、洗い桶に浸けておく癖があるなら、木は避けたほうが気楽に暮らせます。長時間の浸け置きは木にとってつらい扱いです。
結局のところ、2枚に分けるのがいちばん現実的
ここまで書いておいて何ですが、多くの家では「1枚でぜんぶ」を目指さないほうがうまくいきます。おすすめしたいのは、大小2枚に分けて役割を変えるやり方です。
大きいほうは、野菜を刻む・まとめて下ごしらえをする用。ここは切り心地と作業面積が効くので、木でも樹脂でも、自分が使っていて気持ちのいいほうを選びます。
小さいほうは、肉や魚、果物、匂いの強いもの用。洗いやすさと漂白できることを優先して、プラスチックの薄手が扱いやすい。シンクにさっと入る小ささなら、途中で洗い直すのも苦になりません。
この分け方の利点は、衛生面だけではありません。片方が乾いていない時間帯でも、もう一方が使える。まな板が乾かないまま次の調理が始まる、というストレスがなくなります。1枚を大きくて立派なものにするより、2枚で回すほうが、結果的に台所は静かに片づきます。
ただし2枚に増やすと、当然ながら置き場所も2枚分要ります。そこが確保できないなら無理に増やさず、1枚を洗いやすいサイズにするほうがいい。増やすか減らすかの判断も、やはり「置き場所」に戻ってきます。
買う前に確かめたいことと、うまくいかない場合
売場で実物を前にしたときは、この順で見てみてください。
- 持ち上げてみる。片手で持って、手首を返せるか。濡れるとさらに重くなります。
- 厚みを見る。厚いほど反りにくく安定しますが、その分重く、乾きも遅い。薄いほど扱いは軽く、反りやすい。どちらを取るかの話です。
- 縁の処理。角が丸めてあるか、手をかける切り欠きがあるか。毎日触るところなので、地味に効きます。
- 立てたときの安定。少し傾けて立ててみて、素直に立つか。すぐ滑って倒れる形状は、家でも倒れます。
- 家のシンクの寸法をメモしていく。これが一番大事です。売場では小さく見えるものが、家では大きすぎます。
そして正直に書いておくと、うまくいかないこともあります。木のまな板は、住まいの湿気や暮らしのリズムによっては、どれだけ気をつけても黒ずみが出ることがある。使ううちに反って、ガタつくこともあります。プラスチックも、傷が増えれば見た目は戻りません。どちらの素材も、永久に新品のままではいられないという前提で選んだほうが、あとで落胆せずに済みます。
もうひとつ。まな板は「よく切れる包丁」と対で考えると、負担がまた変わります。切れない包丁は押しつける力が増えて、まな板の傷も手の疲れも増える。まな板を買い替えるタイミングは、包丁を研ぎに出すタイミングでもあります。
暮らしの道具は、写真で見たときと手に持ったときで印象がかなり違います。重さ、縁の手触り、立てたときの安定。このあたりは実物を触って確かめるのがいちばん早いので、暮らしの雑貨の売場のような場所で、シンクの寸法をメモに控えて見に行ってみてください。迷っているところをそのまま話してもらえれば、どこで決まるかを一緒に整理できます。
まとめると、順番はこうです。乾かす場所を測る → 台所のタイプに当てはめる → 1枚か2枚かを決める → 最後に素材を選ぶ。素材から入らないことが、いちばんの近道です。