メガネの調整は自分でどこまで?触っていい箇所
鏡を見ると、なんとなくメガネが傾いている。かけ直すとまた戻る気もするし、お店に持っていくほどのことでもない気がする——そのまま数か月、というのはよくある話です。この記事では、自分で触っていい部分と、触らないほうがいい部分をはっきり線引きして、どの時点でお店に持っていけばいいかまでを順番に書きます。
まず「どこがずれているか」を、曲げる前に見分ける
手を出す前に、原因の場所を特定します。ここを飛ばして力をかけるのが、いちばん多い失敗です。
机の上、平らなところにメガネを置いてください。テンプル(つる)を開いた状態で、真横と真上から見ます。片方のテンプルだけが浮いていれば、ゆがみはテンプル側。両方が平らに着いていて、それでも顔にかけると傾くなら、ゆがみは鼻まわりか、そもそも耳の高さの左右差です。
次に、かけた状態を正面から撮ってもらうか、鏡で見ます。レンズの上辺と眉の距離が左右で違うか。片側だけ頬に近いか。傾きの方向まで分かれば、この先の判断がかなり楽になります。
ここまでは、何も動かしていません。それでいいのです。原因が分からないまま曲げると、もとの状態にも戻せなくなります。
自分で触っていいのは、この2つだけ
**ひとつめは、鼻パッドの左右差を「確かめる」こと。**メタルフレームの鼻パッドは、金属の細い腕(クリングス)で支えられています。上から覗き込んで、左右のパッドが同じ高さ・同じ角度で内側を向いているか見てください。片方だけ外を向いていたり、明らかに広がっていたりしたら、それが傾きの原因の可能性が高い。
ただし、確かめるところまでです。指でつまんで寄せたくなりますが、クリングスは細く、根元は薄い金属。曲げ戻しを繰り返した場所から折れます。折れると、フレーム側の部品交換になり、直しの規模が大きくなります。「左右差がある」と分かった時点で、それは持ち込みの材料になります。
**ふたつめは、汚れを落とすこと。**テンプルの内側、耳にかかるあたりと、鼻パッドの裏側。ここに皮脂と汗の混ざったものが溜まると、滑りが変わって、ずれ方まで変わります。ぬるま湯に中性洗剤を少し溶かし、指の腹でなでて、よくすすいで水気を吸わせる。これで「ゆがんだと思っていたけれど、滑っていただけだった」ということは、実際にあります。曲げる前に、まず洗ってみてください。
絶対に触らない3か所
**1. 丁番(ちょうつがい)まわり。**テンプルの開閉部分です。開きが左右で違う、片方だけ固い——ここを指で開いたり閉じたりして調整しようとすると、ネジが緩む、ネジ穴の金属が変形する、ひどいときはネジ山がつぶれます。丁番は小さなネジ1本で精度を保っている部分で、緩みと変形は別の話です。緩んでいるだけならネジを締めれば済むことも多く、そのほうが早く終わります。
**2. レンズを挟む枠(リム)。**レンズのまわりの部分に力をかけると、枠がわずかに開き、レンズの固定が変わります。メタルフレームなら止めネジ付近から歪み、プラスチック枠なら枠が伸びてレンズが落ちます。レンズ自体にも、ふちから力がかかると欠けが入ることがあります。傾きを直したくて枠を持ってひねる、はいちばん避けたい動作です。
**3. パーツのつなぎ目全般。**テンプルの先がゴム状のカバーになっているもの、素材を組み合わせたコンビフレームの接合部、鼻パッドの交換式の差し込み。見た目より接着や圧入で留まっていることが多く、力の逃げ場がありません。
素材ごとに「戻らない曲がり方」がある
曲げていいかどうかは、素材によっても変わります。
チタン系は、しなやかで戻りやすい印象がありますが、戻りやすいということは、指で曲げた分が思ったほど残らないということでもあります。効かせようとして強く曲げ、一線を越えると、そこから先は戻りません。折れるというより、癖が一点に集まります。
一般的な合金・メタルは、曲がる代わりにメッキが割れます。曲げた場所の塗装やメッキが白く筋になったら、それは元に戻せません。見た目の問題だけでなく、そこから腐食が進むこともあります。
**セル(プラスチック系)**は、常温で曲げてはいけない素材です。冷えた状態で力をかけると、しなるのではなく割れます。お店では温めてから形を整えますが、家庭のドライヤーやお湯で同じことをすると、温度が上がりすぎて表面がくもったり、レンズのコーティングが傷んだりします。温めるのは、やらないほうが無難です。
形状記憶をうたう素材は、そもそも曲げても戻る設計です。自分で癖をつけようとしても入りません。
「見え方」の話になったら、線を引く
ゆがみを直したい理由が、「最近見えにくいから」である場合。ここは分けて考えてください。
メガネの傾きや位置がずれると、レンズの設計した位置から目が外れて、見え方が変わることはあります。これはメガネ側の話で、かけ具合を合わせ直すことで変わる余地があります。
一方で、かすむ、まぶしい、片目だけ見えにくい、頭が痛い、急に変化した——こうした症状は、メガネの調整で判断できる範囲ではありません。眼の症状や病気は眼科医の領域です。メガネ店にできるのは、見え方の相談と、メガネそのものの調整まで。気になる症状があるときは、先に眼科で診てもらってください。順番を逆にしないほうが、結果的に早く落ち着きます。
持ち込むときの順番と、伝えるとよいこと
判断の順番をまとめます。
- 平らなところに置いて、ゆがみの場所を見る
- まず洗ってみる(滑りが原因のことがある)
- 鼻パッドの左右差を、曲げずに目で確かめる
- 丁番・枠・つなぎ目には触らない
- ここまでで直らなければ、持ち込む
お店に持っていくとき、「ゆがんでいます」だけより、「右側だけ下がる」「夕方になるとずれてくる」「先週落としてから」のように、いつ・どちら側・どんなときかを伝えてもらえると、見る場所が絞れます。落としたかどうかは特に大きな情報です。
正直に書くと、調整では追いつかないこともあります。素材の疲労が進んでいる、以前に曲げ戻した箇所に癖が集中している、そもそもフレームの大きさが合っていない。そういうときは、直すより選び直したほうが結果がいいこともあります。その場合も、まず現物を見てからの話です。
かけたまま様子を見て、その場で少し動かして、また見る。この行き来は、実物が目の前にあるからできることです。HAUSのメガネ売場にも一級眼鏡作製技能士がいますので、かけ具合が気になったときは、直す前の状態のまま持ってきてもらえれば見ます。自分で曲げていない状態のほうが、判断できることは多いです。